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ひろしま食物語 ひろしま食物語

土に居残る落花生も一粒一粒掘り起こす

2020年11月執筆記事

世羅郡世羅町
ReSEED

森澤 祐佳

 10月6日、清々しい秋晴れに恵まれた朝、落花生の収穫を見せてもらうため、ReSEED(リシード)さんの畑を訪問。今年は急に夏が去り朝晩は寒さすら感じることもあるという気候の変化が、落花生にも影響を与えていた。
 「急に寒くなって葉がいつもより早く茶色くなり、子房柄(しぼうへい。さやにつながっている細長い蔓のような部分)からさやが外れて土に残ってしまうんですよ」。落花生も子孫を残すために必死で、あわよくば地中に居座ろうとするのだとか。しっかり生育していれば風味に問題はないのだが、本来なら株ごとに掘り起こしまとめて収穫できるところを、土に残った落花生を一つ一つ手で掘り拾わなければならないという手間がかかってしまうのが悩ましい。
 ここで落花生がどのようにできるのかを簡単におさらいしよう。まず、私たちが殻をむいて食べている部分が種で、これを土にまく。芽が出て葉が育って花が咲き、受粉すると、花の根元にある子房で受精し、しばらくすると子房の根元が伸びてくる。これを子房柄(しぼうへい)という。子房柄はニョキニョキ伸びて土につき刺さり地中にもぐっていく。やがて先端がふくらんできてさやができ、中に豆ができる。このように、花が落ちたところに生まれることが「落花生」の名前の由来だ。

 収穫する際は一株ごとに引っこ抜くのだが、そのままだと簡単には抜けないので、まずトラクターで根を切る。そうすると、根元を束ねて引き揚げればスルスルっと根っこまできれいに抜ける。森澤さんを見ると素手で引き抜いている。「手袋が好きではないんですよ。素手だと手に感触が伝わってくるのが良くて」。
 引っこ抜いた根っこをよく見ると、ブツブツと小さなイボのようなものがびっしりとくっついている。これは根粒菌※(こんりゅうきん)といって、マメ科の植物の根に付く微生物で、窒素を栄養分に変えて落花生に送り込んでくれるという大切な働きをしているのだ。一株から何本もの子房柄が伸び、その先にはいくつものさやがコロコロとぶら下がっている。束になって土から姿を現すたびに、わぁ~いっぱいなってる! と感激してしまう。
 ここで恒例の試食タイム。普段口にする落花生は炒ってあるかゆでてあるかいずれかの状態がほとんどで、生で食べる機会はないが、あえてこの日は掘りたてホヤホヤをぱくり。うん、炒りともゆでとも違う青っぽさを感じるが、悪くない。でもやっぱり炒ったりゆでたり手を加えることで、香りや風味がグッと引き立つのだろう。

 収穫した落花生は土をふるい落としてそのまま機械にかけ、さやだけを取り外す。子房柄から外れたさやが次々に流れてくるので、ここでザッと選別し、お次は洗浄機で洗う。ゴロゴロと揺られながら落花生のシャワータイム。
 洗い終わった落花生は、呉市焼山にある自社の加工場に運ぶ。この日は「ゆで」の工程を見せてもらった。再度手洗いし、大きな鍋で水から塩ゆで。沸騰して約40分、沸々とゆで上がったらざるに上げて湯切りし、チルド庫で粗熱を取る。十分に冷ましたら、形やサイズによってA品、B品、むき身用に選別。作業台では熟練のスタッフさんが目と手を休めることなく素早く分別している。これらを計量し、真空パックして完成だ。
 畑でも加工場でも、時折、森澤さんがビシッと締めるところを締めつつも、ジョークや笑顔が飛び交う和やかなムードに、チーム「ReSEED」のたくましさを感じた。

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https://peacenuts.jp/

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掲載記事内容は取材当時のものであり、
現在の内容を保証するものではありません。