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ひろしま食物語 ひろしま食物語

MAXで町の農業を守りたい

2021年1月執筆記事

東広島市安芸津町
甲斐農園

甲斐 直樹

 現在は青島みかんとじゃがいも以外に、近年需要が高まっているレモンの栽培を拡大中。栽培面積は2ヘクタールだが、圃場はまだまだ広げていく予定だ。すでに獲得予定の土地も決まっているとのことで、一気に多忙になるのではと心配になるが「僕も、妻も、丸山も、三人ともまだ見習い中のようなもので発展途上ですから、伸びしろがあるはず。三人がMAXで稼働し、仕事量を増やすことで工夫やアイデアが生まれて研ぎ澄まされ、いい仕事ができるようになると考えています」とあくまでも前向き。いい話だと思えばチャンスを逃さないよう行動する。「知らないうちに畑が増えていて…」という舞さんと丸山さんの言葉は気になるが、そこについては後日しっかり説明責任を果たすようで心配なさそうだ。
 「正直いうと、できることならどこまででも(圃場を)増やしたい」とニコニコ顔の甲斐さん。甲斐農園としてではなくても、たとえば他の農園と合同でも、農業によって地域が活性化するならどんな形でも力になりたい。この地域で農家さんが大事に守ってきた農地が荒れていくのはもったいないから、できるだけ自分たちが農作物をつくって守っていきたい。そんな思いが甲斐さんの原動力となっている。

 甲斐さんの周りでも最近20代~40代の若い新規就農者が増えてきたという。甲斐農園がある木谷地区も高齢化や人口減少に悩んでいるが、ウェルカムムードで移住者を受け入れ支えてくれる人たちが多いことがプラス要因になっているようだ。自らも県外からやってきて右も左も分からないところから農業を始めた身。「新規就農者の話を聞くと、自分もそうだったなとか、初心に返りますね」と笑う。
 市や町も移住者を呼び込むためにさまざまなアピールを試みているが、甲斐農園も農業体験などで地域のPRに一役買っている。「僕も農業をやっていて気づかされることがたくさんありますが、店に並んだ農産物の姿しか見たことがないという一般消費者の方も多いと思います。芽が出て、花が咲いて、実がなって…農産物はその成長過程がドラマチック。だから農業の現場を見て木や果実に触れてもらうことで、そのドラマを伝えられたらいいなと思います」。地元の小学生など子どもたちの農業体験を受け入れることもあるという。心から楽しそうに農業を語るニコニコ甲斐お兄さんの姿に「農業って楽しそう!」そんなふうに憧れる子どももきっといるのだろう。

 「就農した時は自分が農業をやりたいという思いばかりが先に立っていましたが、振り返ると、地域の理解と協力があったからこそ続けられているのだと、つくづく思います。だからこれからは自分の思いだけではなくて、地域の思いや課題をしっかりと僕が理解して、地域に求められる未来を担っていきたい。僕の農業を応援し支えてくれた地域に、今度は僕が恩返しする番。自分が農業を続けることで地域に還元したい。JAと地域と甲斐農園と、みんなで協力して農業を盛り上げていきたいですね。上手く連携できれば、安芸津を素晴らしい産地として後世に残していけるはずですから」。

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掲載記事内容は取材当時のものであり、
現在の内容を保証するものではありません。