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ひろしま食物語 ひろしま食物語

林業と原木椎茸の共生

2019年9月執筆記事

三次市三良坂町
三良坂きのこ産業

石井 千明

 原木椎茸の栽培は、当然ながら原木を確保することから始まる。生産者自ら伐採することもあるが、基本的には林業者から購入している生産者が多い。石井さんもお父さんの時代には自分たちで伐採していた時期もあったが、椎茸を本格的に栽培するようになってからは購入している。
 原木の伐採は、木が水を吸い上げるのを止めて葉が紅葉し落葉する10月中旬から11月頃に始まり、春に再び水を吸い上げ葉が出るまでには終えておきたい。一方、植菌は12月頃からスタートし、春~夏にかけて椎茸の生育にとって大切な気温が上昇する時期に備えて、できれば桜の咲く頃までに、遅くても4月中には終えておきたい。時期が重なるため、両方こなしていては種植えが追いつかないのだ。
 石井さんが仕入れているのは主に大分県の木。ほかに地元の業者が入れてくれる木も使用している。大分県は昔から椎茸栽培に適したクヌギが多かったことから、原木椎茸の一大産地となっており、基本は干し椎茸だが、近年は生での販売も増えているという。
 木を購入する際は、山の一定の範囲もしくは山全体で契約し、契約範囲内に立つ木を購入するという形になる。石井さんはほぼ毎年大分に赴き、契約している山と候補の山を一通り歩いて、伐採状況や木の生育具合などを見て収量を予測し契約を判断する。作業のしやすさも重要で、車がある程度奥まで進入できて運び出しがスムーズにできるかどうかも確認する。現地の事情を詳しく把握している世話人と懇意なので、貴重な情報も手に入りやすい。
 大分をはじめ九州はまだ森林が豊かな方ではあるが、全国的に見れば年々林業者は減少している。原木を手に入れる手段を失えば当然生産者は減ってしまう。林業と原木椎茸には切っても切れない深いつながりがあるのだ。

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掲載記事内容は取材当時のものであり、
現在の内容を保証するものではありません。